間質性肺炎
70歳の父親が間質性肺炎の中の、特発性肺線維症(IPF)と言われました。どのような病気でしょうか。
間質性肺炎とは
鼻・口から吸いこんだ空気は喉頭→気管→気管支の順に通過し、最終的には肺胞と呼ばれる柔らかい小さな袋に到達します。人の肺は、数億個と言われている、空気の入った肺胞(小さいな風船)の集合体です。
肺胞の薄い膜(壁)を通して、肺胞内の空気から血液中に酸素が取り込まれ、逆に老廃物である二酸化炭素が肺胞内に放出されます。肺胞の空気のある部分を実質と言い、肺胞の膜(壁)の部分を間質と言います。肺胞の空気のある実質に起こる炎症が、皆さんがよくご存じの肺炎です。細菌などの病原体で起こり、抗生物質で治療されます。
間質性肺炎は、肺胞の薄い壁(間質)に起こった炎症で、肺胞の壁に炎症細胞が増加し、結果として、この肺胞の壁が厚くなる病気です。そのため咳が出たり、酸素の取り込みができなくなり、息苦しくなります。
その原因には膠原病、薬剤性、塵肺性、アレルギー性、感染性(ウイルス)などいろいろとありますが、原因不明のものを特発性と言います。また、発病の経過より、急性、慢性などに分類します。
経過の早い間質性肺炎は、特別な検査や治療が必要ですので、速やかに、専門病院に紹介するようにしています。
原因不明で、慢性の経過をみる代表的な間質性肺炎が特発性肺線維症(IPF)です。
間質性肺炎の分類
1)発病の経過
急性 慢性
2)原因別
- 原因のはっきりしているもの
膠原病
薬剤性
塵肺性
アレルギー性(過敏性肺炎)
感染性(ウイルス) - 原因不明のもの(特発性)
特発性肺線維症(IPF)(最も多い)
特発性非特異性間質性肺炎
特発性器質化肺炎
特発性肺線維症(IPF)とは
肺胞壁の炎症(間質性肺炎)が長期間持続すると(慢性化)、肺胞の線維化が進行し(皮膚の傷がケロイドのような状態に変化するイメージ)、肺胞が潰れ、肺が硬くなり、膨らみにくくなります。このような状態を肺線維症と言います。この変化は非可逆性で、どんな薬を使用しても元に戻すことはできません。
原因不明の、慢性経過の間質性肺炎の中で、最も頻度が高く、予後不良な病気がこの特発性肺線維症(IPF)です。
症状は乾いた咳と息切れです。しかし、無症状の場合もあり、検診での胸部X線やCT検査で偶然発見されることも多いのです。
50歳以上の男性に多く、喫煙はこの病気の危険因子と考えられています。
徐々に進行していきますが、患者さんごとに進行の度合いは大きく異なり、経過の予測は困難です。
また、風邪などをきっかけに急激に呼吸困難が悪化する急性増悪が起こりますので、注意が必要です。
診断には胸部X線やCTなどの画像検査が重要です。胸部X線では肺が縮小し、肺の下の方が白くなります。CTではハチの巣のような陰影が特徴的です
A. 正常の肺胞
B. 間質の炎症で肺胞の壁が厚くなった
C. さらに線維化が進行し、肺胞の改築が起こり、小さな穴が形成される
これがCTでみられる、上記のハチの巣のような陰影を呈する
肺機能検査での肺活量の低下や、血液検査でのKL-6の上昇などで、病気の進行度/重症度を評価します。
治療としては、肺胞の線維化を抑える抗線維化薬(オフェブなど)があります。残念ながら完治させる薬ではありませんが、進行を遅らせ、急性増悪の回数を減らします。以前は、軽症で自覚症状に乏しい場合は、経過観察する場合もありましたが、最近では早期の薬物治療の重要性が言われています。
ただし、副作用のことや、薬剤費が高額であることもあり(医療費助成制度はありますが)、全ての患者さんに使用される訳ではありません。
この病気は肺がんの合併が多く、禁煙することが必須です。
予後不良の病気ですが、適切な治療により進行を遅らせることができます。
その為にも正しく診断がされることが重要ですが、特に早期の特発性肺線維症(IPF)の診断は難しいところがあります。
当院では確定診断まではできませんので、原則として、専門病院に紹介することにしています。