非結核性抗酸菌症 マック症
家族(60歳、女性)が非結核性抗酸菌症と診断されました。どのような病気なのでしょうか。
非結核性抗酸菌症は、結核菌以外の抗酸菌による感染症で、肺感染症を引き起こします。
結核菌以外で肺感染症を引き起こす抗酸菌にはさまざまな種類があります。日本では、アビウム菌とイントラセルラーレ菌を併せたMAC(マック)菌が最も多く、この病気はMAC(マック)症とも呼ばれています。
近年、この病気は中高年の女性を中心に急増しています。結核症とは異なり、人から人へは感染しません。この菌は水や土に広く生息しており、そうした環境から感染すると考えられています。
この病気は結核よりもゆっくりと進行し、病変の消長を繰り返しながら、10〜20年かけて悪化していきます。進行すると、咳、痰、血痰、発熱などが見られますが、最初は自覚症状がなく、健診の胸部X線写真で偶然見つかることも多い病気です。
確定診断には、胸部CTでの比較的特徴的な陰影に加え、喀痰の培養検査で同じ菌が2回以上検出されることが必要です。MAC(マック)症に関しては、血液検査でMAC抗体を測定し、補助診断することもできます。この検査の感度は84%、特異度は100%ですので、陽性であればMAC(マック)症と診断して、ほぼ間違いありません。
この病気の厄介な点は、結核症とは異なり、薬が効きにくいことです。MAC(マック)症に対しては、2種類の抗結核薬とクラリスロマイシンという抗生剤を1年以上使用しますが、治療に難渋したり、再発したりする症例が多々存在します。
自覚症状のない人や、高齢者に対しては、無治療で経過を観察する選択肢もあります。
ごく初期のMAC症
肺の前の方に位置する中葉、舌区という部位に、小さな粒々の陰影と微小な気管支拡張症を認める(○枠→)
かなり進行したMAC症
多発空洞(○枠→)を認める