ましもと内科呼吸器科

新型コロナウイルス感染症

新型コロナ感染症の臨床像について

オミクロン株と最近の新型コロナの特徴
 オミクロン株およびその亜系統は、非常に感染力が強い一方で、以前の株と比べると重症化率や致死率は低下しています。
ウイルスはまず鼻や喉などの上気道に感染し、そこで増殖します。

最近の傾向
 ・軽症者・無症状者が多い:多くの方が発熱しても軽度で、入院が必要な重症例は減っています。
 ・無症状者や軽症者からも感染が広がる:症状がほとんどない人からも感染するため、注意が必要です。
 ・咽頭痛が強い:のどの強い痛みが初発症状として目立つことが多いのも特徴です。

主な症状
 上気道症状:咽頭痛、鼻水・鼻づまり、くしゃみ、咳
 ・全身症状:発熱、倦怠感、筋肉痛、頭痛、関節痛
 これらはインフルエンザとよく似ており、症状だけで新型コロナとインフルエンザを区別するのは困難です。

嗅覚・味覚障害 
 以前の株で特徴的だった嗅覚・味覚障害は、オミクロン株以降では発生率が大きく低下し、初期症状として訴える人は少なくなっています。

経過と後遺症(罹患後症状) 
 多くの方は発症後約1週間で症状が軽快しますが、以下のような症状がしばらく残ることがあります:
 ・咳、倦怠感、筋力低下
 ・集中力の低下や「ぼんやり感」(ブレインフォグ)
 ・嗅覚・味覚障害(数か月〜1年後も残る場合あり)

症状の経過や後遺症は、ワクチン接種歴、年齢、基礎疾患の有無、感染時の重症度によっても左右されます。

新型コロナ感染症(オミクロン株)による肺炎
 新型コロナウイルス感染症が流行し始めた当初は、肺炎を起こす頻度が高く、重症化して死亡に至る例も少なくありませんでした。
 しかし、現在流行しているオミクロン株では肺炎を起こすことは稀で、多くは比較的軽症で経過します。
 本症例では、新型コロナ感染後に発熱と咳嗽が持続したため、胸部CTを施行しました。その結果、両肺の外側に淡い陰影(枠)を散在性に認めました。これは通常の細菌性肺炎とは異なり、新型コロナ肺炎に特徴的とされる画像所見です。

新型コロナによる肺炎は減少し、入院される方は減りました。現時点で入院される方はどのような状態が多いのでしょうか。

 オミクロン以降・ワクチン普及後は、“純粋なコロナ肺炎(ウイルス性肺炎)”そのものより、感染をきっかけに高齢者の 
  ・誤嚥性/二次性細菌性肺炎
  ・心不全などの持病の増悪
  ・脱水・フレイル悪化や経口摂取不良
で入院になるケースが目立ちます。日本の最新指針でも、近年の入院例はウイルス肺炎の悪化より誤嚥性肺炎等が主因のことが多い、と明記されています。
 一方で、酸素が必要になるウイルス性肺炎は今も一定数みられ、特に高齢・基礎疾患ありの方では注意が必要です。

新型コロナウイルスはいつからいつまで感染しますか、インフルエンザと比較してください。

 新型コロナは“発症直前〜直後の数日が最強・全体は長め(〜約10日)”、**インフルは“発症直後が最強・全体はやや短め(〜約1週間)”**が基本です。

比較早見表

 

項目

新型コロナ感染症

インフルエンザ

うつし始め

発症1–2日前

発症1日前

感染性ピーク

発症直前〜発症後数日

発症後1–3

典型的な感染可能期間(成人)

発症後8–10程度(多くはその前半で強い)

発症後5–7程度

長引く例

重症・免疫抑制で10日超もあり

小児・免疫抑制で1週間超もあり

無症状からの伝播

あり

ありうるが主は有症状期

 

新型コロナウイルスは、軽症や無症状の方からもうつりますか。

 ・最近診断された新型コロナの9割は軽症です。重症は**ごく一部(数%程度以下)**に限られ、多くは上気道かぜ様で経過します。
 ・地域全体では、無症状の感染者も2〜3程度いると推定されます(検査されていない方も含む推計)。
 ・現在は発熱のない軽症例無症状の感染が少なくありません。
 ・症状が軽くても、発症初期〜数日間は特にうつしやすいことが知られています。
 ・常に自分は新型コロナかもしれないと自覚することが大切です。

まとめ
 ・熱や咳がない人からもうつることがあります
 ・元気に見える人からも、知らないうちに感染することがあります

新型コロナ感染症は1回かかるとどのぐらいかかりませんか?

 ・回復直後~1–3か月:再感染リスクは低め。ただし完全にゼロではありません。
 ・3–6か月:免疫は徐々に弱まり、再感染リスクが上がってきます。
 ・6か月以降:ウイルス進化(免疫逃避)+免疫低下の影響で、再感染が目立ちやすくなります。
 ・検査について:回復後90日以内は、遺伝子検査で残存RNAで陽性になることがあり、「本当の再感染か」の判定が難しいことがあります。

 一度かかると数か月はかかりにくいけれど、早ければ数週間でまたうつることもあります

熱がなく、普通の風邪と思ったら新型コロナでした。このような例はどの程度ありますか。

 むしろ「熱が出ないコロナ」は珍しくありません。
 ある調査では症状があって受診したの人の約6割は無熱であったとの報告があります。
 要するに、「熱がない=コロナではない」とは言えない状況です。とくにオミクロン系の流行以降は、のどの痛み・鼻症状・咳だけで経過する例が多数ありますし、ワクチンや既感染で発熱が出にくくなることもあります。
 疑わしいときは抗原または核酸増幅法での検査をしましょう。

新型コロナ感染症の診断について

 当院では、鼻腔からの抗原定性検査と遺伝子検査(等温核酸増幅法)を行っており、いずれも15分以内に結果が判明します。
 検査費用(保険3割負担の目安)は、抗原検査が960円、遺伝子検査(等温核酸増幅法)が2,630円です。
 発症初期では抗原検査が陰性となる場合があるため、より確実な診断を希望される方には遺伝子検査をおすすめしています。
 検査は予約制ですので、まずはお電話でお問い合わせください。

新型コロナ感染症の療養期間について

療養期間のご案内(令和5年5月8日以降適用)

1.法律上の外出自粛は不要です
 外出を控えるかどうかは、季節性インフルエンザと同様、個人の判断に委ねられています。

2.外出を控えることが推奨される期間
 発症日を0日目として5日間は、特に他人へうつすリスクが高いため 外出を控えることが推奨されます
 5日目に症状が残っている場合は、「熱が下がって、痰や喉の痛みなどの症状が軽くなってから24時間以上」経過するまで外出を控えて様子をみてください。
 無症状の場合は、検体採取日を0日目とします。

3.周囲への配慮期間
 発症後10日間はウイルス排出の可能性があるため、以下の配慮をお願いします。
 ・不織布マスクの着用
 ・高齢者・免疫低下者などハイリスク者との接触を避ける
 ・ 咳・くしゃみ等の症状が続いている場合は特に咳エチケットを行う

4.体調が変化したときの対応
 療養中に体調が悪化したら、かかりつけ医等に相談してください。
 緊急性が高い場合は、迷わず119番に連絡を。

5.ご家族・同居者がいる場合
 可能であれば部屋を分け、看護はできるだけ限られた方でおこなってください。
 同居の方は、発症日を0日目として最初の5日間は自分の体調に特に注意し、7日目までは発症する可能性があるため、手洗い・換気・マスクなどの基本的な感染対策をしっかり行ってください。

学校の出席停止について

 新型コロナウイルス感染症にかかった場合は、学校保健安全法第19条に基づき、出席停止の扱いとなります。令和5年5月8日から出席停止の基準が変更され、次のように定められています。

 「発症した日を0日目として5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで
 ※軽快とは、解熱剤を使用せずに解熱し、かつ呼吸器症状が改善傾向にあることを指します。
 したがって、
 ・どんなに早く熱が下がったとしても、最低でも発症後5日間は出席停止となります。
 ・症状が長引いた場合は、「症状が軽快した日+1日」まで出席停止期間が延長されます。


 出席停止解除後、発症から10日を経過するまでは、マスクの着用をお願いします。

新型コロナ感染症の治療薬(ラゲブリオ)について

  当院では、院外処方箋にて ラゲブリオ(モルヌピラビル) を処方しています。
  ・作用
    ウイルスが体内で増えるのを抑えることで、入院や死亡のリスクを減らします。
    ※すぐに熱が下がったり元気になる薬ではありません。
  ・服用方法
    朝・夕の1日2回、5日間内服します。
  ・特徴
    他の薬との飲み合わせや食事制限はありません。
    腎機能障害・肝機能障害のある方も使用可能です。
    催奇形性があるため、妊娠中や妊娠の可能性がある方は服用できません。
  ・主な副作用
    下痢、吐き気、めまい、湿疹など。
  ・処方対象
    18歳以上で発症から5日以内の方
    高齢者や基礎疾患をお持ちで、重症化リスクが高い方
    ただし非常に高価な薬です
     (保険負担額:1割9,430円/2割18,860円/3割28,290円)
    そのため、患者様のご同意を得た上で処方いたします。