肺塞栓症 肺梗塞症
肺塞栓症・肺梗塞症とはどんな病気?
「足のむくみ」が命に関わる? 突然襲う「肺の詰まり」を防ぐために
突然の呼吸困難や胸痛を引き起こす「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」と、その病態が進行した「肺梗塞症(はいこうそくしょう)」。 一般には「エコノミークラス症候群」としても知られていますが、日常生活や術後など、様々な場面で発症するリスクがあります。
1. 肺塞栓症と肺梗塞症の違い
この2つは一連の疾患プロセスですが、病態の深さが異なります。
1)肺塞栓症(Pulmonary Embolism: PE)
心臓から肺へ血液を送る「肺動脈」が、血栓(血の塊)によって閉塞した状態です。 原因の90%以上は、足や骨盤内の静脈にできた血栓が血流に乗って肺へ飛んでくること(深部静脈血栓症)に起因します。血管が詰まることで、ガス交換障害(酸素不足)や右心不全を引き起こします。
2)肺梗塞症(Pulmonary Infarction)
肺塞栓症の結果、血流が途絶えた領域の肺組織が壊死(えし:組織が死んでしまうこと)した状態です。

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【なぜ「梗塞」まで進行するのか?】
通常、肺は「肺動脈」と「気管支動脈」という2つの血管から酸素や栄養を受けている(二重支配)ため、肺動脈が詰まっただけでは組織死(梗塞)に至らないことが多く、肺梗塞になるのは肺塞栓症全体の約10〜15%程度とされています。 しかし、以下の条件が重なると側副血行(迂回路)が機能せず、肺梗塞に至ります。
・肺の末梢(端の方)の細い血管が詰まった場合
・心不全や慢性肺疾患があり、元々の血流が悪い場合
2. 症状の特徴
**「突然」**発症するのが特徴です。足の血栓が飛んだ瞬間から症状が現れます。
●肺の症状
・突然の息切れ、呼吸困難(動いた時だけでなく、安静時にも起こりうる)
・胸の痛み(深呼吸をすると痛むことが多い)
・冷や汗が出る、動悸がする、脈が速い
・失神(重症の場合、意識を失うことがあります)
・血の混じった痰が出る(肺梗塞を合併している可能性)
●足の症状(前兆として現れることがあります)
・片足だけの急な腫れ、むくみ
・ふくらはぎの痛み、赤み、熱感

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肺塞栓症と肺梗塞症では、自覚症状に以下のような違いが見られることがあります。

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注意: 「息を吸うと胸が痛い」「血痰が出る」という症状は、肺梗塞を起こしている可能性が高いサインです。
3. 検査と画像所見(診断の決め手)
診断には、血液検査(Dダイマーの上昇)に加え、画像診断が不可欠です。特に「肺梗塞」においては特徴的な影が見られます。
1)造影CT検査(最も確実な診断法)
造影剤を使って血管を映し出します。
・肺塞栓の所見: 肺動脈内に造影剤が満たされない「欠損像(filling defect)」として血栓が黒く映ります。
・肺梗塞の所見: 血管が詰まった先の肺野に、**「楔状影(けつじょうえい:Wedge-shaped opacity)」**と呼ばれる三角形の影が見られるのが特徴です。これは、詰まった血管の支配領域に一致して組織が変化していることを示します。また、胸水(肺の周りに水が溜まる)を伴うことも多くあります。
2)胸部レントゲン検査
肺塞栓症の初期はレントゲンで異常が見つからないことも多いですが、肺梗塞に至ると特徴的なサインが現れることがあります。
・Hampton’s hump(ハンプトンズ・ハンプ): 肺の端(胸膜側)を底辺とし、心臓側を頂点とするドーム状または三角形の浸潤影です。肺梗塞に特異的な所見として知られています。
3)心臓超音波(エコー)
心臓への負担の程度や、心臓内の血栓の有無を調べます。
4)下肢静脈エコー
血栓の供給源である「足の静脈の血栓(DVT)」の有無を確認します。
4. 原因とリスク因子
血栓ができる主な原因は「血流の停滞」「血管の損傷」「血液の凝固異常」の3つです。具体的には以下のような方がリスクが高いとされています。
1)長時間同じ姿勢で動かない方:
・長時間の飛行機やバス移動(エコノミークラス症候群)
・デスクワーク、長時間の運転
・入院中や手術後で寝たきりの状態
2)身体的要因:
・ご高齢の方
・肥満の方
・妊娠中や出産直後の方
・がん(悪性腫瘍)の治療中の方
3)その他:
・ピル(経口避妊薬)の服用
・脱水状態
・喫煙習慣
・過去に血栓症を起こしたことがある方

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5. 治療方針
重症度と血栓の量に応じて治療を選択します。
・抗凝固療法(基本治療): ヘパリン(注射)や、ワーファリン、DOAC(直接作用型経口抗凝固薬)を使用し、血液をサラサラにして新たな血栓形成を防ぎ、自身の血液を溶かす力で血栓が消失するのを待ちます。
・血栓溶解療法: ショック状態にある重症例に対し、t-PAなどの強力な血栓溶解剤を投与します。
・カテーテル治療: 血管内から直接血栓を吸引・破砕します。出血リスクが高く溶解療法ができない場合に検討されます。
・下大静脈フィルター: 足に残っている大きな血栓が再び肺に飛ぶのを防ぐため、お腹の静脈に「傘」のようなフィルターを留置します。
6. 予防と早期発見
日常生活での予防が何より重要です。
・こまめな水分補給を行う。
・長時間同じ姿勢を避け、ふくらはぎの運動やマッサージを行う。
・リスクが高い場合は、弾性ストッキングを着用する。
7.最後に
肺塞栓症・肺梗塞症は「突然」発症し、時として命に関わります。 しかし、早期に診断し適切な治療を行えば、後遺症なく回復できる疾患でもあります。 **「片足の急なむくみ」や「深呼吸時の胸の痛み」、「突然の息切れ」**を感じた際は、ためらわずにを受診してください。
肺塞栓症(肺梗塞症)の診断になぜ血液検査の「Dダイマー」が重要なの?
Dダイマーは、体が発する「血栓の警報」です
息苦しさや胸の痛みで病院を受診した際、肺塞栓症(肺梗塞)を疑って「Dダイマー(ディー・ダイマー)」という血液検査を行うことがあります。
なぜ、CT検査などの画像診断の前に、この血液検査が重要視されるのでしょうか。その理由は、**「体に負担をかけずに、肺塞栓症の可能性を否定できるから」**です。
1.そもそもDダイマーとは?
Dダイマーは、体の中で作られた血栓(血の塊)が溶かされた時にできる「燃えカス」のような物質です。
・血栓ができる: 血管内で血液が固まります。
・体が治そうとする: 体には、不要な血栓を溶かそうとする働き(線溶作用)があります。
・Dダイマーが出る: 血栓が溶ける過程で、その成分である「フィブリン」が分解され、Dダイマーとして血液中に放出されます。
つまり、**「血液中のDダイマー値が高い = 体のどこかに血栓があり、それが溶けようとしている」**という証拠になるのです。
2.「除外診断」に非常に強い
Dダイマー検査の最大のメリットは、「陰性(基準値以下)であれば、肺塞栓症の可能性は極めて低い」と判断できる点にあります。これを医学用語で**「除外診断」**と呼びます。
肺塞栓症は命に関わることもある病気ですが、確定診断のためには造影CT検査など、放射線被曝や造影剤の使用を伴う検査が必要です。
・Dダイマーが正常値(陰性)の場合: 体の中に大きな血栓はないと考えられます。つまり、**「CT検査をしなくても、肺塞栓症ではないと安心して判断できる」**のです。これにより、患者さんは不必要な検査を避けることができます。
3. 数値が高い=肺塞栓症、とは限らない(注意点)
一方で、Dダイマーには注意点もあります。それは、**「数値が高いからといって、必ずしも肺塞栓症とは限らない」**ということです。
Dダイマーは、血栓以外でも以下の理由で上昇することがあります。
・加齢
・感染症や炎症
・手術後や外傷(ケガ)
・がん(悪性腫瘍)
・妊娠中
そのため、「Dダイマーが高い」という結果が出た場合は、「肺塞栓症かもしれないし、別の原因かもしれない」と判断し、次のステップとして造影CT検査や超音波検査を行い、原因を突き止めることになります。
4.まとめ
肺塞栓症の診断におけるDダイマーの役割を整理すると以下のようになります。
・Dダイマーが正常: 肺塞栓症の心配はほぼありません。(検査終了)
・Dダイマーが高い: 肺塞栓症の可能性がありますが、他の原因も考えられます。(精密検査へ)
このように、Dダイマーは**「まず最初に肺塞栓症の可能性をふるいにかける(スクリーニングする)」**ために、非常に有用で欠かせない検査なのです。

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「ゼーゼー」=「喘息」とは限りません。見逃してはいけない「肺塞栓症」
喘息の薬が効かない息苦しさ、「血管の詰まり」を疑ってください
1. はじめに
息をするたびに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と音がする(喘鳴:ぜんめい)。 これは気管支喘息の代表的な症状ですが、実は別の怖い病気でも起こることがあります。それが**「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」**、いわゆるエコノミークラス症候群です。
文献によると、急性肺塞栓症の数%〜10%程度に喘鳴(Wheezing)が認められると報告されています。
「喘息だと思って吸入治療をしていたが、実は肺の血管が詰まっていた」というケースは稀ではなく、私たち専門医も常に注意深く鑑別を行っています。
2. なぜ、血管が詰まる病気で「喘鳴」がするの?
肺塞栓症は、足の静脈などにできた血の塊(血栓)が飛び、肺の血管に詰まる病気です。 「血管の病気なのに、なぜ気管支(空気の通り道)が狭くなるの?」と不思議に思われるかもしれません。
実は、詰まった血栓から**「気管支を収縮させる物質(セロトニンなど)」**が放出されることが分かっています。また、血流が途絶えたことによる反射で気管支が縮むこともあります。これにより、喘息と同じように気道が狭くなり、ゼーゼーという音が聞こえることがあるのです。
3. 「いつもの喘息」と違う? ここをチェック
ただの喘息発作なのか、肺塞栓症なのかを見分けることは、命を守るために非常に重要です。以下のような特徴がある場合は、肺塞栓症の疑いがあります。
・発症が突然である
「〇時〇分に急に苦しくなった」というように、症状の始まりがはっきりしていることが多いです。
・吸入薬があまり効かない
喘息の発作止め(気管支拡張薬)を使っても、呼吸の苦しさが改善しない、あるいは酸素不足(SpO2の低下)が続く場合です。
・足のむくみや痛みがある
片方の足だけが急にむくんだり、ふくらはぎに痛みがある場合、そこに血栓ができている可能性があります。
・リスク因子がある 「長時間の移動(旅行など)の後」「最近手術を受けた」「ピルを内服している」「がんの治療中」などの背景がある場合は要注意です。
4. 最後に
「ゼーゼーするから喘息だろう」と自己判断するのは危険な場合があります。 特に**「急に始まった息苦しさ」や「いつもの吸入薬が効かない」**場合は、早急に受診してください。早期発見が適切な治療につながります。

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見逃されやすい「慢性の肺塞栓症」の診断について教えて
階段の息切れ、体力の衰えではありません 肺の血管に「古い血栓」が残っていませんか?
「息切れがして病院に行ったけれど、レントゲンはきれいだと言われた」 「血液検査も異常なしで、ストレスや運動不足と言われてしまった」
それなのに、階段を登るとやっぱり苦しい…。 もしそんな経験があるなら、それは**「慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)」**という病気が隠れているサインかもしれません。
なぜ、一般的な検査ではこの病気を見つけることができないのでしょうか?
理由1:胸部レントゲンには「血管の中」は写らない
胸部レントゲン(X線)は、肺炎や肺がん、肺気胸などを見つけるのは得意です。しかし、肺塞栓症は「血管の中」が詰まる病気です。 レントゲンは空気の通り道(肺そのもの)の状態を見る検査であり、血管の中の詰まりまでは写し出すことができません。 そのため、たとえ重症であっても「肺はきれいですね」と言われてしまうことが多いのです。
理由2:血液検査(Dダイマー)が上がらない「落とし穴」
ここが最も誤解されやすいポイントです。 通常、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の血液検査では、「Dダイマー」という数値が高くなります。これは「血栓が溶けようとしている」時に出る反応です。
しかし、慢性の肺塞栓症の場合、この数値はしばしば「正常」になります。
・.急性の血栓: できたばかりの柔らかい血栓。体内で溶かそうとする反応が起きるため、Dダイマーが上がる。
・慢性の血栓: 時間が経ち、血管の壁と同化してカサブタのように硬くなった血栓(器質化)。もう溶ける反応が終わっているため、Dダイマーは上がらないことが多い。
「血液検査で血栓の反応がないから大丈夫」という判断が、発見を遅らせる大きな原因となります。
理由3:単純CT(造影剤なし)では見えにくい
CT検査なら何でも分かると思われがちですが、造影剤を使わない「単純CT」では、血管の中の血栓は周囲の組織と同化してしまい、はっきりと確認できないことがよくあります。 また、慢性の場合は血栓が血管の壁に張り付いているため、より一層見分けがつきにくくなります。
では、どうすれば見つかるの?
「原因不明の息切れ」の正体を突き止めるためには、以下のような専門的な検査が必要です。
1.肺血流シンチグラフィ
微量の薬剤を使って、「肺のどこに血液が流れていないか(血流の欠損)」を色分けして見る検査です。この病気の発見に最も鋭敏で、有効な検査です。
2.造影CT検査
造影剤というお薬を点滴しながら撮影します。血管の中を白く染めることで、血流が途絶えている場所や、血管の壁にへばりついた古い血栓、狭くなった血管の様子を鮮明に映し出します。
3.心臓超音波検査(心エコー)
詰まりそのものは見えませんが、肺の血管が詰まっていることで「心臓にどれくらい負担がかかっているか(肺高血圧の兆候)」を確認します。
最後に:あきらめないで相談を
「検査で異常なし」と言われたけれど、自覚症状が続いている。それは「気のせい」ではありません。 一般的な検査の「死角」にあるこの病気を見つけるためには、呼吸器や循環器の専門的な知識と、適切な検査選びが必要です。
長引く息切れでお悩みの方は、あきらめずに当院へご相談ください。

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肺梗塞と肺炎:見分けるのが難しいの?
「抗生物質が効かない肺炎」の正体 その原因は、バイ菌ではなく、「血栓」かもしれません
「熱が出て、咳があり、胸が痛い」 こうした症状が出たとき、多くの人はまず「風邪をこじらせて肺炎になったのかな?」と疑うでしょう。しかし、実はその裏に**「肺梗塞(はいこうそく)」**という全く別の病気が隠れていることがあります。
これら2つの病気は、原因が全く異なる(血栓 vs 細菌・ウイルス)にもかかわらず、症状や検査結果が酷似しているため、診断の際には慎重な見極めが必要です。
1. 症状がそっくり(発熱の罠)
最大の特徴は**「どちらも熱が出る」**ということです。
・肺炎の発熱: 細菌やウイルスとの戦い(感染)による炎症熱です。
・肺梗塞の発熱: 血流が途絶えて肺の組織が壊死した際に起こる反応(組織障害)による熱です。
さらに、**「胸の痛み」「息苦しさ」「咳」「血痰」**といった呼吸器特有の症状も共通しているため、症状への問診だけでは区別がつかないことが多々あります。
2. 血液検査データの類似(炎症反応の上昇)
病院で行う一般的な血液検査でも、両者の数字は似た動きをします。
・白血球(WBC)の増加
・CRP(炎症反応)の上昇
これらは「体の中で何かが起きている」ことは示しますが、「それが菌なのか血栓なのか」までは教えてくれません。肺梗塞であっても、組織の壊死に伴う炎症でこれらの数値が跳ね上がるため、データ上は肺炎のように見えてしまうのです。
3. レントゲン写真の影
胸部レントゲンを撮ると、どちらも**「肺に白い影」**が映ります。
・典型的な肺梗塞では「くさび状の影」が見えることがありますが、初期段階や場所によっては肺炎の影(浸潤影)と見分けがつかないぼんやりとした影になることが少なくありません。
・また、どちらの病気でも「胸水(肺に水がたまる)」が見られることがあり、これも判断を難しくさせます。
4.では、どうやって見分けるのか?(鑑別のポイント)
1)「発症の仕方」の違い
肺炎: 数日かけて風邪症状から徐々に悪化することが多い。
肺梗塞: 「さっきまで元気だったのに、急に息苦しくなった」という突然の発症が多いのが特徴です。
2) Dダイマー(血液検査)
血栓が溶ける時に出る物質「Dダイマー」の数値を測定します。これが異常に高値であれば、肺梗塞(肺塞栓症)の疑いが濃厚になります。(※ただし、重度の肺炎でも多少上がることがあります)
3)造影CT検査(決定打)
通常のレントゲンやCTでは血管の中までは見えません。「造影剤」を使ったCT検査を行うことで、肺の血管が血栓で詰まっているかどうか(=肺塞栓)を鮮明に映し出すことができます。これが診断の確定に最も重要です。
4)抗生物質の反応
「肺炎」と診断して抗生物質を投与しても熱が下がらない、症状が良くならない場合、「実は肺梗塞だったのではないか?」と疑い直すきっかけになります。
5.まとめ:比較表

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