ましもと内科呼吸器科

声帯機能不全症

  • 声帯機能不全症とはどんな病気?  A.息を「吸う」と喉が詰まる、喘息とは違う「声帯機能不全」の正体

    声帯機能不全症(VCD)とは?

     **VCD(ブイ・シー・ディー)は、息を吸うときに声帯がギュッと閉じてしまい、空気の通り道(喉の奥=声門)が狭くなることで、息苦しさやヒューヒュー音(吸うときの高い音)が出る病気です。
    喘息(ぜんそく)に似ていますが、主に「吸うとき」に苦しくなる点が違いです。近年は誘発性喉頭閉塞(ILO)**
    と呼ばれることもあります。


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    よくある症状
     ・発作的な呼吸困難(特に吸う時)
     ・首元(喉のあたり)で聞こえる高いヒューヒュー音(吸気性喘鳴)
     ・喉の締めつけ感、声がかすれる(嗄声)
     ・せき
     ・体を動かした時や、緊張・不安で出やすいことがあります

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    ※ 発作時でも酸素の値(SpO₂)はふつう正常で、胸の音はきれいに聞こえることが多いのも特徴です。

    どうやって診断するの?
     ・問診:出やすい場面(運動、刺激臭、後鼻漏、胃食道逆流、ストレスなど)を確認します
     ・検査:呼吸機能検査では吸う息の流れが平たくなることがあります
     ・決め手:発作中に喉頭ファイバー(細いカメラ)で、吸うときに声帯が閉じているのを確認します

    喘息との違い
     ・音の場所:喘息は胸でゼーゼー(主に吐く時)、VCDは首(喉)でヒューヒュー(吸う時)
     ・薬の効き方:VCDは気管支拡張薬や吸入ステロイドが効きにくいことが多い
     ・酸素:VCDはSpO₂が保たれることが多い

    治療の基本
     1.病気の説明と安心感
      喉の入口が一時的に狭くなるだけで、肺や心臓の病気ではありません。
     2.呼吸のトレーニング(音声療法士のリハビリが有効)
      ・お腹を使ってゆっくり呼吸(腹式呼吸)
      ・鼻から軽く吸って、口をすぼめてゆっくり吐く(pursed-lip exhalation)
      ・ストロー呼吸・スニッフ(軽く鼻で素早く吸う)など、吸い込みを急がない練習
     3.誘因への対策
      胃食道逆流、後鼻漏、副鼻腔炎の治療/刺激臭・たばこ・激しい運動の回避調整/ストレス対処
     4.心理的サポート
      不安が強い場合はカウンセリングやお薬を併用することがあります。

    発作が出たときの対処
     ・まず姿勢を楽にして、肩の力を抜く
     ・鼻からスッと吸い、口をすぼめて長めに吐くを数回くり返す
     ・可能なら静かな場所で落ち着く/刺激臭から離れる

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    いつ受診する?
     ・はじめての発作、強い息苦しさが続く、運動や学校・仕事に支障が出る
     ・喘息の治療をしていても良くならないヒューヒュー音が続く
     ・胃もたれ・胸やけ、後鼻漏、慢性せきがある → 合併症の治療で改善することがあります

  • 声帯機能不全症と気管支喘息はどうやって見分けるの?  A.難しいケースもあります

    1. 患者さんが感じる「症状」の違い
     どちらも「息苦しい」ことに変わりはありませんが、詳しく問診をすると以下のような違いがあります。


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    2. 検査で見分ける(決定的な証拠)
     症状だけでは区別が難しい場合や、合併している場合でも、専門的な検査を行うことで正しく診断できます。
     ① 呼吸機能検査(フローボリューム曲線) 息を思い切り吸って、思い切り吐いた時の空気の流れをグラフにします。
     喘息の方: 息を吐き出す勢いが弱くなるため、グラフの上側(吐く線)がへこみます。
     声帯機能不全の方: 息を吸う時に声帯が閉じてしまうため、グラフの下側(吸う線)が**平坦(台形のような形)**になります。
     ② 喉頭内視鏡検査(ファイバースコープ) 鼻から細いカメラを入れて、直接声帯の動きを観察します。 通常、息を吸う時には声帯は大きく開きますが、声帯機能不全の発作中(あるいは発作を誘発させた時)は、息を吸おうとした瞬間に声帯が閉じてしまう動き(奇異性運動)が確認できます。これが診断の決め手になります。

    3. 診断がつかない時は…
     「喘息の治療をしているのに良くならない」 「検査では喘息と言われたけれど、喉の詰まりが気になる」
     こうした場合は、喘息と声帯機能不全が合併している可能性や、喘息だと思っていたものが実は声帯機能不全だったという可能性があります。

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  • 声帯機能不全症と気管支喘息が合併したらどうなるの?  A.「喘息の薬が効きにくい」、もしかしたら両者の合併かもしれません

    1. 喘息と声帯機能不全は「合併」します
     気管支喘息の患者さんのうち、かなりの割合(報告によっては数割)で、声帯機能不全(VCD/ILO)を合併していることがわかってきました。 特に、「重症の喘息」と診断されている方の中に、実は**「喘息自体は軽症だが、声帯機能不全が強いために重症に見えている」**というケースが隠れています。

    2. 合併すると起きる「負のスパイラル」
     この2つが合併すると、お互いが悪循環を引き起こし、症状が複雑になります。
     1)喘息発作が起きる(咳が出る、息苦しくなる)
     2)喉に力が入る・不安になる(強いストレスと緊張)
     3)声帯が誤作動を起こす(刺激で声帯が閉じてしまう=VCD発作)
     4)さらに苦しくなる吸入薬を使っても、喉の詰まりが取れない)
     このように、**「喘息がきっかけ(スイッチ)になって、声帯機能不全が発動する」**というパターンが多く見られます


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    3. こんな症状は「合併」のサインです
     純粋な喘息とは少し違う、以下のような特徴がないか確認してみてください。
     ・症状の変化: 最初は「胸」がゼーゼーしていた(喘息)が、途中から「喉」が詰まって息が吸えなくなる(VCD)感覚がある。
     ・薬の効き方: 発作止め(気管支拡張薬)を使うと、少し楽にはなるが、「喉の奥の詰まった感じ」だけが頑固に残る
     ・音の混在: 息を「吐くとき」も「吸うとき」も、両方とも音が鳴って苦しい。


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    4. 診断はどうするの?
     合併している場合、通常の検査だけでは判断が難しいため、より専門的な分析が必要です。
     ・呼吸機能検査: 喘息の特徴(吐く息の低下)と、声帯機能不全の特徴(吸う息の制限)が両方混ざった波形が出ることがあります。
     ・詳しい問診と内視鏡: 「どのタイミングで、どこが苦しいか」を詳しく伺い、必要であれば内視鏡で声帯の動きを確認して確定診断します。

    5. 治療の「2本柱」
     合併している場合、喘息の治療(吸入薬など)だけを強化しても症状はゼロになりません。 車の両輪のように、2つの治療を並行して行うことが重要です。


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     「薬を使っているのにすっきり治らない」という方は、薬を増やす前に、一度「合併」の可能性を疑って詳しく調べてみることをお勧めします。