ましもと内科呼吸器科

百日咳

大人の百日咳について教えてください

要点
 ・**長引く咳(2〜3週間以上)**が続いたら、成人でも百日咳の可能性。
 ・うつりやすく、抗菌薬を開始して5日経過するまでは周囲にうつす可能性が高い。
 ・診断は時期で使い分け:発症から3週は遺伝子検査(LAMP)、2から3週以降は血清抗体(PT-IgG)を主に。
 ・治療はマクロライド系が第一選択
 ・抗菌薬で周囲への感染性は低下するが、咳そのものは数週間〜数か月続くことがあります。

百日咳とは
 ・百日咳はBordetella pertussis(百日咳菌)による急性気道感染症です。
 ・主な感染経路は飛沫感染・接触感染。
 ・潜伏期間は7-10日、長くて3週間。
 ・乳幼児では重症化リスクが高く、成人の長引く咳が家庭内の感染源になることがあります。
成人で目立つ特徴
 ・発熱は軽度〜なし。夜間に強い咳込みが続きやすい。
 ・典型的な「連続する激しい咳→ヒューと息を吸い込む音(whoop)→嘔吐」は成人でははっきりしないことも多い。
 ・全経過は2〜3か月に及ぶことがあります。
どうやって広がる?(感染性と出勤・登校の目安)
 ・感染させやすい時期:症状出現前後〜咳の開始後約3週間。適切な抗菌薬治療を始めると5日後には感染性が大きく下がるとされます。
 ・学校等の扱い:学校保健安全法では、百日咳は「特有の咳が消失するまで、または適正な抗菌薬投与後5日経過まで」出席停止。
 ・職場の目安:法的な一律規定はありません。医療・保育など配慮が必要な職場では、抗菌薬開始後5日経過・体調の回復を確認して復帰目安とする対応が一般的です(職場規程に従ってください)。
症状の経過(3期性)
 ・カタル期(約2週間):かぜ様症状。次第に咳が増える。
 ・痙咳期(約2〜3週間):発作性の連続咳込み。成人ではwhoopが目立たないことも。
 ・回復期:発作が減るが、軽い咳は数週間持続することがある。
受診のタイミング
 ・2週間以上続く咳、夜間の咳込み、周囲に百日咳の人がいる。
検査と診断:時期で使い分け
 ・
発症~3週以内;後鼻腔拭いによる遺伝子検査(LAMP) 抗菌薬開始後は偽陰性になりやすい。
 ・発症後2~
3週以降  ; 血液検査:PT-IgG 
治療
 抗菌薬(第一選択:マクロライド系)
 ・アジスロマイシン:標準的には3日間(1日1回)または5日間投与のいずれか。
 ・クラリスロマイシン:7日間。
 期待できる効果と限界 
 ・**発症後早期(とくにカタル期)**は症状軽減の可能性。
 ・カタル期を過ぎると咳そのものの改善は限定的。ただし周囲への感染拡大を抑える目的で発症後3週以内の治療が推奨されます。
 ・抗菌薬開始後5日で感染性は大きく低下。
対症療法
 ・咳止め、気管支拡張薬、吸入治療などを症状に応じて。咳は毒素による気道過敏で長引くため、完全に止まらないことも珍しくありません。

百日咳では、菌がいなくなってもなぜ何カ月も咳が持続するのですか

百日咳は菌がいなくなった後でも咳が数週間〜数か月続くことがあります。
 ・理由:百日咳毒素などで気道の神経が過敏になり、炎症後の咳過敏が残るため。
 ・期間の目安:ふつう 3〜10週、ときに 3か月超(まれに〜6か月)。
 ・感染力:咳が始まって 2〜3週以降は大きく低下。マクロライド系抗生物質を5日以上内服すれば、以後の感染性はほぼ消失。
 ・抗菌薬の役割:早期開始は有用ですが、痙咳期に入ってからは咳の期間を大きくは短縮しません(主に二次感染予防・周囲への伝播抑制)。

百日咳に感染した場合、学校や職場はどのくらい休まないといけないですか

学校(園を含む)
 ・出席停止:百日咳は学校保健安全法の第二種感染症です。
 「特有の咳が消失するまで」または「適正な抗菌薬治療を5日間行い終えるまで」が出席停止の基準です。

会社(出勤)
 ・法的な全国一律の出勤停止規定はありません。就業規則や産業医の方針に従いますが、感染性の観点からは「適正な抗菌薬を開始して5日経過後」を一つの目安にすると安全です。
 ・抗菌薬を使わない場合、咳が出始めてから約3週間は排菌が続くとされるため、その間の出勤は配慮(在宅勤務・業務調整・マスク徹底等)が望ましいです。

補足
 ・抗菌薬開始後5日で感染力は大きく低下しますが、咳そのものは数週間〜数か月続くことがあります(長引く咳だけでは感染性を示しません)。
 ・乳幼児・妊婦・基礎疾患のある方が身近にいる職場や、医療・介護・保育の現場では、職場(施設)の指示に必ず従ってください。